英ヒューマノイド新興Humanoid、1億5200万ドル調達 評価額13億5000万ドルでシェフラーとボッシュが出資
英ロンドンのヒューマノイド開発企業Humanoidは2026年7月21日、Prime Movers Labが主導するシリーズAで1億5200万ドルを調達したと発表した。調達後の企業価値は13億5000万ドルで、独シェフラーとボッシュが顧客、供給元、株主を兼ねる。資金は車輪型ヒューマノイドの量産、2026年10〜12月期のベータ機出荷、AIソフトKinetIQの開発に充てる。

英ロンドンに本社を置くヒューマノイドロボット開発のHumanoidは2026年7月21日、シリーズAで1億5200万ドルを調達したと発表した。調達後の企業価値は13億5000万ドル。同社はヒューマノイド専業の欧州企業として初めて評価額10億ドルを超えたと説明している。設立は2024年で、創業から約2年での到達となる。
今回のラウンドは米ベンチャーキャピタルのPrime Movers Labが主導した。独自動車部品大手シェフラー、ボッシュ、台湾の富邦金融グループ傘下Fubon Financial Holding Venture Capital、Aglaé Venturesが参加した。累計調達額は2億7000万ドルで、シリーズA以前の調達は差し引き約1億1800万ドルとなる。
資金の使途
同社は次世代ロボット基盤の開発、物流、製造、小売の現場での商用展開、車輪型ロボットの量産、自社AIシステムKinetIQの開発に資金を充てるとしている。車輪型のベータ機は2026年10〜12月期に出荷を始める。製造はボッシュが受託生産パートナーとして担う。新興企業が自前工場を持たず、ドイツの大手製造業に組み立てを委ねる形だ。
最初の製品HMND 01 Alphaには車輪型と二足歩行型がある。同社は2025年12月、二足型が組み立てから48時間で安定歩行し、開発期間は5カ月だったと発表した。業界の通常の開発期間は18〜24カ月というのが同社の比較だ。今回の資金調達の発表では可搬重量や速度、稼働時間は示していない。
評価額を支えるシェフラー契約
事業面で最も具体的な裏付けは、2026年5月13日に公表したシェフラーとの契約だ。シェフラーは2032年までに世界の工場へ4桁規模の車輪型ロボットを導入する計画を掲げる。第1段階は2026年12月から2027年6月までで、独ヘルツォーゲンアウラッハ工場の稼働中の生産ラインで箱の搬送から始める。シュヴァインフルト工場では3カ月の能力実証と3カ月の現地検証を実施する。提供形態はフリート管理ソフト、保守、24時間サポートを含むRaaSだ。
契約は逆方向にも結ばれている。シェフラーはHumanoidの関節アクチュエーターの優先供給元となり、2031年まで需要の50%超を担う。供給数量は7桁規模を見込む。金額は開示していない。
Humanoidはシーメンスと産業物流の概念実証を終え、2026年3月にはSAP、自動車部品メーカーMartur Fompakと自動車生産物流の実証を実施した。5月21日には実証を経てボッシュとの提携を発表した。従業員はロンドン、ボストン、バンクーバー、サンディエゴに250人超を抱え、創業者のArtem Sokolov氏が最高経営責任者を務める。
競合との比較
米国勢と比べると調達規模は小さい。Figure AIは2025年9月に評価額390億ドルで10億ドルを調達し、ロボット基盤モデルのSkild AIは2026年1月に評価額140億ドルで14億ドルを集めた。Apptronikは2026年2月に5億2000万ドルのシリーズA追加調達を終えた。欧州ではドイツのNEURA Roboticsが2026年6月10日に最大14億ドルのシリーズCを発表したが、評価額は公表していない。
- Humanoid
- GB
- 2024
- シリーズA
- 152
- 1.35
- 2026-07-21
- NEURA Robotics
- DE
- 2019
- シリーズC(上限)
- 1400
- データなし
- 2026-06-10
- Apptronik
- US
- 2016
- シリーズA追加
- 520
- データなし
- 2026-02-11
- Skild AI
- US
- 2023
- シリーズC
- 1400
- 14
- 2026-01-14
- Figure AI
- US
- データなし
- シリーズC
- 1000
- 39
- 2025-09-16
- 1X Technologies
- US
- 2014
- シリーズB
- 100
- データなし
- 2024-01-13
各社公式発表に基づく直近の公表ラウンド。開示数値のみで推計は含まない。nullは非開示。NEURAの金額は発表された上限。
2026年10月1日時点
最初の量産品を車輪型としたのは現実的な判断だ。平らな工場の床なら脚を使わずに済み、転倒時の安全問題を避けられ、消費電力も抑えられる。腕とカメラは人の作業高さに保てる。箱の搬送作業では階段や不整地はほとんど関係しない。
日本の製造業にとっての意味
注目すべきは部品大手の関与の仕方だ。シェフラーとボッシュはHumanoidの顧客であり供給元であり株主でもあり、NEURA RoboticsのシリーズCにも出資している。欧州の駆動部品大手は複数のヒューマノイド企業に分散して賭け、将来のアクチュエーター需要を押さえにかかっている。精密減速機やモーター、センサーで強みを持つ日本の部品メーカーにとって、欧州ヒューマノイドの部品調達は地元大手に先行される恐れがある。一方、人手不足が深刻な日本の物流や工場では、平らな床で箱を運ぶ車輪型という割り切った設計は導入のハードルを下げる参考事例になり得る。
リスク
Humanoidは売上高、1台当たりのコスト、ボッシュの受託ラインの生産能力を開示していない。シェフラーの数字は2032年までの目標で、現場投入は2026年12月に始まったばかりの段階となる。ベータ機を出荷する前の企業に13億5000万ドルの値がつくのは、実証が予定通り有償の導入へ移ることを前提としている。
ROBOTNESS分析
Humanoidの企業価値はロボットそのものより、欧州の駆動部品大手をサプライチェーンと顧客名簿の両方に同時に組み込んだ構造に由来する。
根拠は契約の構図にある。シェフラーはロボットを買い、アクチュエーターの過半を供給し、株式も持つ。ボッシュは製造を受託し出資もした。ハードウエア新興企業の二大リスクである部品コストと量産能力の多くが手当てされている。
最も強い反論は、循環的な取引が需要を実態以上に見せるという点だ。部品を売る企業には発注する動機があり、6年間で世界の工場に4桁という目標は1工場当たりでは大きくない。
強気シナリオ:ヘルツォーゲンアウラッハの第1段階が2027年前半に目標を達成し、シェフラーが本格発注に移る。アクチュエーター契約で原価が下がり、ドイツの交代勤務者の人件費を下回るRaaS料金が実現すれば、次の資金調達で評価額は大きく跳ね上がる。
弱気シナリオ:車輪型ロボットが実際のラインで速度や信頼性の基準を満たせず実証が長引く。資本が10倍の米国勢が同等の製品を先に出せば、Humanoidは戦略株主の条件で資金を仰ぐことになる。
- 2026年10〜12月期:車輪型ベータ機の出荷
- 2026年12月:シェフラーのヘルツォーゲンアウラッハ工場で初稼働
- 2027年6月:シェフラー第1段階の終了と拡大判断
- シリーズA、2026年7月21日発表
- 1億5200万ドル
- 13億5000万ドル
- 2億7000万ドル
- Prime Movers Lab
- シェフラー、ボッシュ、Fubon Financial Holding VC、Aglaé Ventures
- 2024年、ロンドン
- 250人超
- 2026年10〜12月期
- シェフラー、2032年までに4桁規模導入を計画
なぜ重要か
Humanoidはヒューマノイド専業の欧州企業として初めて公表評価額10億ドルを超え、金融投資家だけでなく事業会社を株主に迎えた。シェフラーとボッシュは需要、アクチュエーター供給、受託生産を分担し、ハードウエア新興企業が実証から量産へ移る際につまずきやすい3つの関門を支える。
欧州の需要家には、米中以外で資金力のある域内の調達先がHumanoidとNEURA Roboticsの2社に増えたことを意味する。データ管理、保守体制、輸出管理を重視するドイツの自動車メーカーや一次部品メーカーの購買部門にとって選択肢が広がった。
競合分析
Figure AIとApptronikは資金力で大きく上回り、米国の自動車や物流顧客向けに二足歩行型を軸とする。Humanoidは同じ搬送作業をより単純な車輪型で攻め、有償導入を早められる可能性があるが、階段や不整地への対応は捨てている。
欧州で最も直接的な競合はNEURA Roboticsで、ボッシュとシェフラーという投資家を共有する。日本では川崎重工業などが人型ロボット研究を続けるが、部品大手が顧客と供給元を兼ねる欧州型の同盟はまだ見られない。
企業価値の背景
調達後13億5000万ドルから今回の1億5200万ドルを引くと、調達前評価額は約12億ドル。今回放出した持ち分は約11.3%(1億5200万ドル÷13億5000万ドル)となる。シリーズA以前の調達は約1億1800万ドル(累計2億7000万ドルから1億5200万ドルを引いて算出)で、資本の大半を今回で得た。
Figure AIの390億ドル、Skild AIの140億ドルと比べると米国首位級の一部にとどまる。米国資本市場の厚みと、まだベータ機を出荷していない事実が反映されている。売上高が非開示のため倍率比較はできない。
サプライチェーンへの影響
シェフラーが2031年まで関節アクチュエーターの50%超、7桁規模を供給し、組み立てはボッシュが担う。2026年1月にはNVIDIA技術の採用を発表した。Humanoidは設計とソフトに集中し、重い製造は外部に任せる構造だ。
この構造は資本負担を軽くする一方、価格交渉力を弱め、単一調達のリスクを生む。残る半分弱のアクチュエーターを誰が供給するかは、減速機やサーボモーターを手がける日本企業にとって欧州ヒューマノイド市場への入り口になり得る。
今後の注目点
最初の試金石は2026年10〜12月期のベータ機出荷で、ボッシュの受託生産体制を検証する。次は2026年12月のヘルツォーゲンアウラッハ工場での稼働と、シュヴァインフルトでの実証、検証の結果だ。
2027年6月のシェフラー第1段階終了時に本格契約へ移るかが最大の焦点となる。同社が対象業種に挙げる小売で株主以外の顧客を獲得できるかも注目点だ。
アナリストの見方
見立て:Humanoidは多くのヒューマノイド新興企業より早く産業サプライチェーンを確保し、車輪型物流ロボットの欧州量産候補に浮上した。ただ評価額は検証済みの現場実績より先行している。
確信度:中。投資家、供給構造、導入日程は具体的に開示されている。一方で売上高、原価、信頼性のデータがなく、主要顧客が投資家兼供給元である点から高とは評価しない。
問うべき論点
2026年10〜12月期に何台のベータ機を出荷し、ボッシュのラインの月産能力はどの程度か。
シェフラーの目標台数のうち契約で確定している割合と、RaaSの料金条件はどうなっているか。
シェフラー分以外のアクチュエーターはどこから調達し、KinetIQは単一の演算基盤メーカーに依存しているか。