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中国の智元機器人、昨年の売上高10億元超と開示 フルサイズ人型「遠征A3」と世界向けロボットレンタル網を発表

上海の人型ロボット企業、智元機器人(AgiBot)は4月17日のパートナー大会APC 2026で、売上高が2023年の30万元から2025年に10億元超へ伸び、今年1万台目がラインオフしたと明らかにした。フルサイズ人型「遠征A3」を含むハード4系統、モデル6種、5年で20億元超を投じる生態系計画も打ち出した。

中国の智元機器人、昨年の売上高10億元超と開示 フルサイズ人型「遠征A3」と世界向けロボットレンタル網を発表 (イラスト:ROBOTNESS)
要約

中国の人型ロボット大手、智元機器人(AgiBot)は2025年の売上高が10億元を超え、2026年も数倍の成長を目指すと明らかにした。同社が2026年4月17日に上海で開いたパートナー大会APC 2026の内容を自社サイトで公表した。

同社が示した売上高の推移は、2023年が約30万元、2024年が6000万元余り、2025年が10億元超。1~3月期の進捗は順調としたが数値は示さなかった。今年1万台目のロボットが生産ラインから出荷され、清掃ソリューションは累計1万台を出荷、今年は6000台超を目指すという。

目玉は4月に発売したフルサイズ人型ロボット「遠征A3」だ。業界最高の推力重量比をうたい、フルサイズながらハーフサイズ機を上回る運動性能と柔軟性を実現したと説明した。ホットスワップ対応の電池パック2個で、交換なしに8~10時間の連続作業ができる。年末発売予定の対話型サービス端末「霊犀X3」、2026年投入の軽量型「精霊G2 Air」と高可搬型「精霊G2 Max」、複数サイズの四足ロボット「D2」シリーズも披露した。

ソフト面では、運動、対話、作業の三層で6種のモデルを公開または予告した。適応制御と生成型動作のための基盤モデル2種、7~9月期に投入予定のマルチモーダル対話モデル「WITA Omni 1.0」、同じく7~9月期予定の作業モデル「GO-3」を含む。GO-3の学習データはGO-2の数十~数百倍だという。

事業面では、すでに実運用しているという7つのパッケージを打ち出した。電子部品の精密搬送、資材運搬とデパレタイズ、物流仕分け、小売の案内と販売補助、飲食店の案内、警備巡回、商業清掃で、物流仕分けは6カ月の稼働実績がある。

需要の裾野を広げる施策も二つ示した。世界初をうたうロボットレンタル網「擎天租」と、今後5年で20億元超を研究支援、教育と人材、パートナー育成、開発者コミュニティーに投じる生態系計画だ。大会には30以上の国と地域から2500社超のパートナーが参加したという。

同社は上海に本社を置き、創業者で董事長兼最高経営責任者(CEO)の鄧泰華氏と、共同創業者で総裁兼最高技術責任者(CTO)の彭志輝氏が率いる。今回の開示で、上場する中国の人型ロボット2社と同じ売上規模にあることが分かった。優必選科技(UBTech)の香港での本決算によると2025年の売上高は20億100万元で、うちフルサイズ人型ロボットが8億2060万元。宇樹科技(Unitree)の上場書類では2025年の売上高は16億9927万元だった。

日本から見ると規模の差が際立つ。川崎重工業やトヨタ自動車系の研究機関が人型ロボットの開発を続けるものの、人型ロボットで年10億元規模の売上高を開示した日本企業はない。人手不足に悩む物流、小売、外食は日本でも導入候補だが、中国勢が量産とレンタルで単価を下げれば、日本市場への輸出攻勢が強まる可能性がある。

未確認の点も残る。同社は粗利率、純利益、現預金を開示せず、製品別の売上構成や新製品の価格も示さなかった。1万台目は人型に限らず全機種の合計だ。推力重量比が業界最高とする主張にも具体的な数値はない。

中国主要人型ロボット企業の売上高比較
  • 智元機器人(AgiBot)
    2023年売上高(百万元)
    0.3
    2024年売上高(百万元)
    60
    2025年売上高(百万元)
    1000
    根拠
    会社発表、2024年と2025年は下限値
  • UBTech(全体)
    2023年売上高(百万元)
    データなし
    2024年売上高(百万元)
    1305.4
    2025年売上高(百万元)
    2001
    根拠
    香港取引所の本決算
  • UBTech(フルサイズ人型)
    2023年売上高(百万元)
    データなし
    2024年売上高(百万元)
    35.6
    2025年売上高(百万元)
    820.6
    根拠
    香港取引所の本決算
  • Unitree
    2023年売上高(百万元)
    159.13
    2024年売上高(百万元)
    データなし
    2025年売上高(百万元)
    1699.27
    根拠
    上海証券取引所の上場公告書

開示値に基づく。AgiBotは会社が示した下限値で未監査。Unitreeは万元単位から換算し、2024年は未取得のため空欄。

2026年10月1日時点

ROBOTNESS分析

智元は品ぞろえの広さと自社モデルを武器に、UBTechやUnitreeの集中戦略より早く中国企業の需要を取り込む賭けに出た。

根拠は製品拡大と売上曲線だ。2年で30万元から10億元超へ伸ばすには多くの入り口が要る。今回の大会では全価格帯のハード、初期導入の負担を下げるレンタル網、インテグレーターを呼び込む生態系予算をそろえた。

最も有力な反論は、拡大が開発力と利益率を薄めるという点だ。収益性を開示していない企業にとって、ハード4系統とモデル6種は重荷で、レンタル事業は資本を貸借対照表に縛る。

強気シナリオ:レンタル網と7つのパッケージが実証を継続収入に変え、7~9月期のGO-3が作業成功率を高める。すでに1万台を出荷した清掃ロボットが資金基盤になる。

弱気シナリオ:売上が研究、展示、政府系調達に偏っていたことが明らかになり、Unitreeの低価格攻勢が下位製品を圧迫し、モデル投入が遅れる。数倍成長の目標に疑問符が付く。

注視すべきシグナル:

  • 2026年7~9月期:WITA Omni 1.0とGO-3が予定通り出るか。
  • 2026年末:霊犀X3の発売と2026年売上高の開示。
  • 監査済みの利益率を初めて示すことになる上場申請の有無。
要点
イベント
APC 2026、上海、2026年4月17日
売上高2023/2024/2025
約30万元/6000万元余り/10億元超
2026年目標
売上高を数倍に
生産の節目
2026年に1万台目がラインオフ
主力新製品
フルサイズ人型「遠征A3」、電池2個のホットスワップで8~10時間
モデル
6種、WITA Omni 1.0とGO-3は2026年7~9月期
生態系予算
5年で20億元超
清掃ロボット
累計1万台出荷、2026年は6000台超が目標
出典
ROBOTNESS インテリジェンス
  1. 01

    なぜ重要か

    これまで外部は提携先の発表や報道から智元の規模を推し量るしかなかった。同社が自ら売上推移を示したことで、監査済みの数値を出すUBTechやUnitreeと初めて同じ物差しで比べられるようになった。

    智元は中国の未上場人型ロボット企業で有数の規模を持つ。10億元超の売上高が将来の監査でも維持されれば、中国には年売上10億~20億元規模の人型中心企業が3社並ぶことになり、欧米の人型スタートアップが開示したことのない水準だ。

  2. 02

    競合分析

    UBTechとは工場や物流での配備を争う。UBTechの強みは監査済みの実績と、増資や産業資産の買収を可能にする香港上場だ。智元の強みは広い製品群と運動から作業までの自社モデルにある。

    Unitreeとは研究、教育、娯楽市場でぶつかる。日本勢では、ソフトバンクロボティクスが接客ロボットで先行したものの、人型の量産規模で中国勢と競える企業は現時点で見当たらない。

  3. 03

    企業価値の背景

    今回の発表に企業価値は含まれない。公開の基準はUnitreeで、監査済みの2025年売上高16億9927万元と非経常損益控除後純利益5億9075万元を基に科創板上場を申請した。智元の売上は同じ水準だが、収益性は非開示だ。

    2026年に売上が数倍になれば、智元は上場2社を売上で大きく引き離す。将来の目論見書はこの数値で評価される。

  4. 04

    サプライチェーンへの影響

    フルサイズ人型が交換式電池2個で8~10時間動くということは、スマートフォンより電動工具や電動二輪に近い電池設計を意味し、珠江デルタの電池産業に追い風となる。推力重量比の主張は、フレームレスモーター、減速機、ドライバーを一体化した関節モジュールを示唆する。

    日本の減速機、ベアリング、センサー各社にとっては、智元がG2、A3、D2で部品を標準化し、量産力のある中国サプライヤーから一括調達すれば参入余地が狭まる。

  5. 05

    今後の注目点

    7~9月期のモデル投入、年末の霊犀X3、累計生産1万台以降の更新に注目したい。香港または上海での上場申請は監査済みの売上と利益率をもたらすため、最も情報量の多いシグナルとなる。

    20億元の生態系予算が大学やインテグレーターの具体的な事業として執行されるか、擎天租が保有台数や稼働率を公表するかも確認したい。

  6. 06

    アナリストの見方

    見立て:智元の成長は規模では本物だが質は未知数で、品ぞろえ戦略は2026年に利益率の圧力で試される。

    確信度:中。売上推移と新製品は会社自身の発表による。ただ監査済みの内訳や利益率がなく、1万台の数字に複数機種が混在するため確信度には限界がある。

  7. 07

    問うべき論点

    2025年売上高のうち人型、清掃ロボット、その他の比率はどうか。

    遠征A3の価格、可搬重量、推力重量比の具体値はいくらか。

    擎天租は何台を運用し、レンタル分は出荷台数に含まれるのか。

    智元は1年以内に上場を通じて監査済み財務諸表を開示するのか。