キビテク、シリーズBで約6億円調達 メーカー混在のロボットを束ねる「HATS」の製品化を加速
メーカーの異なるロボットを一つの基盤で統合制御するソフト「HATS」を手がけるキビテク(東京 品川)は2026年9月30日、シリーズBで約6億円を調達したと発表した。JICベンチャーグロースインベストメンツと住商ベンチャーパートナーズが運営するファンドを引受先とする第三者割当増資で、HATSの開発、営業体制の強化、採用に充てる。
ベンダーフリーのロボット制御ソフト「HATS」を開発するキビテク(東京 品川)は2026年9月30日、シリーズBラウンドで総額約6億円を調達したと発表した。JICベンチャーグロースインベストメンツが運営するJICベンチャーグロースファンド2号と、住友商事系の住商ベンチャーパートナーズが運営するSVPオープンイノベーションファンド1号を引受先とする第三者割当増資による。
調達の内容
JICのファンドは既存株主による追加出資で、住友商事系のファンドは新たな株主となる。同社は主導投資家を明示しておらず、企業価値も開示していない。資金はHATSの製品開発力の強化、営業体制の拡充、人材採用に充てる。
HATSとは
キビテクはHATSを、メーカーの異なる複数のロボットを一つのプラットフォームで統合制御できるベンダーフリーのソフトと位置づける。WMSやMESといった上位システム、エレベーターなどの設備、AIとの連携にも対応するという。2026年9月には製品を「HATS Standard」と「HATS Pro」の2グレードに改め、開発者やシステムインテグレーター向けに「HATS SDK」を新たに公開した。
対象は物流、製造、施設管理、点検の各分野だ。発表文には導入拠点数や顧客名は記されていない。
会社の背景
キビテクは2011年11月の設立で、代表取締役CEOは前原賢一氏。2024年3月にはJICベンチャーグロースインベストメンツの主導で約8.1億円を調達し、ディープコア、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタルなどが加わった。同社は当時、3回のラウンドで累計10億円超を調達したとしていた。前原氏は今回の発表で、開発と営業の体制を強化し、ロボットが現場で当たり前に働く社会の実現を目指すと述べた。
競争環境と日本市場
今回のシリーズBは、ロボットそのものではなくその上の層に資金が集まった週と重なった。仏インボルトは6ブランドのアームに対応するAIビジョンで1250万ドルを、米デストロAIは混成ロボット群の倉庫作業を割り振るソフトで800万ドルを調達した。キビテクの特徴は建物との連携で、ロボットにエレベーターや扉を使わせる機能は倉庫だけでなく、オフィスや病院、ホテルで働くサービスロボットにも欠かせない。人手不足を背景に用途ごとに異なるメーカーのロボットを入れる現場が多い日本では、メーカーに依存しない統合層の必要性が高まりやすい。
ROBOTNESS分析
キビテクの調達は、日本の資本が新たなロボットではなく統合の層に賭けていることを示す。人手不足でメーカー混在が進む市場では理にかなった判断だが、調達規模はその層がまだ小さいことも映している。
根拠は投資家の顔ぶれと製品の変化にある。政府系の成長投資会社が追加出資し、総合商社系のベンチャーキャピタルが加わったことは、両社が知る物流や不動産、施設管理の顧客が、複数メーカーのロボットを中立的に運用する手段を求めていることを示唆する。SDKの公開は、個別の受託開発から、システムインテグレーターが再販できる製品への移行を狙う動きとみられる。
- SiMa.ai
- 米国
- フィジカルAI向けエッジAIチップ
- シリーズC
- 150
- 2026-09-28
- インボルト
- フランス
- 産業用ロボット向け3DビジョンAI
- 名称なし
- 12.5
- 2026-09-30
- デストロAI
- 米国
- 倉庫の異機種ロボット統合制御
- シード
- 8
- 2026-09-29
- タンジェント ロボティクス
- 米国
- 触覚ロボットハンド
- プレシード
- 4.5
- 2026-09-30
- キビテク
- 日本
- メーカー非依存のロボット制御ソフト
- シリーズB
- データなし
- 2026-09-30
各社の一次発表に基づく開示額。キビテクは約6億円と開示しており換算していない。推計ではなく開示値。
2026年10月1日時点
最も有力な反論は、今回の調達額が前回を下回る点だ。2024年の約8.1億円に対し今回は約6億円で、導入実績の数字も示されておらず、外部から市場での手応えを測りにくい。ロボットメーカーやビル設備メーカーが自ら連携機能を備える可能性もある。
- 2024-03-27
- 第三者割当増資(3回目)
- 810
- JICベンチャーグロースインベストメンツ
- 2026-09-30
- シリーズB
- 600
- データなし
会社発表の概算額。前回比 = 600 / 810 = 0.74倍。発表間隔は917日。累計 = 2024年時点の10億円超 + 約6億円。推計ではなく開示値。
2026年10月1日時点
強気シナリオでは、キビテクがSDKを通じてシステムインテグレーターを取り込み、1年以内に拠点数やロボット台数を公表し、日本の建物や倉庫で働くロボットの標準的な中立層となる。弱気シナリオでは受託型のインテグレーターにとどまり、ロボットメーカーやエレベーターメーカーの大型プラットフォームにその役割を吸収される。
論旨を裏付けるか覆すシグナルは三つある。
- 2027年3月31日までに、HATS SDKを採用したシステムインテグレーターや顧客を公表するか
- 2027年9月30日までに、HATSでつながる拠点数、ロボット台数、メーカー数を開示するか
- 今後12カ月で、住友商事グループ企業との事業提携が生まれ、新株主が顧客になるか
- 約6億円
- シリーズB(第三者割当増資)
- JICベンチャーグロースファンド2号(既存株主)、SVPオープンイノベーションファンド1号(住商ベンチャーパートナーズ、新規)
- 2024年3月 約8.1億円(JICベンチャーグロースインベストメンツ主導)
- HATS。2026年9月にStandard、Pro、SDKを投入
- 2011年11月、東京都品川区
- 前原賢一 代表取締役CEO
- HATS開発、営業体制、採用
- 2026年9月30日
なぜ重要か
日本はロボットの買い手がメーカー混在の運用に行き着く可能性が最も高い市場の一つだ。人手不足から、物流事業者やビル管理会社、病院は用途ごとにロボットを1台ずつ導入し、それぞれが別の供給元から独自の制御装置とともにやってくる。キビテクは、これらの機械にエレベーターや扉、作業指示を共有させる役割が必要で、その担い手は中立であるべきだと賭けている。
調達額は小さいが投資家の意味は大きい。JICベンチャーグロースインベストメンツは政府系の成長投資会社で、住友商事系ファンドの背後には物流や不動産の事業を持つ総合商社があり、顧客や販売経路になり得る。
競合分析
競合は三つの層にいる。ロボットメーカーは自社の運行管理や建物連携を拡充している。国内のエレベーターやビル設備のメーカーはロボットの昇降機利用やセキュリティーゲート通過のためのインターフェースを整えており、関所の役割を担い得る。工場向けの独ワンデルボッツや倉庫向けの米デストロAIといった海外のマルチベンダー基盤は似た課題を扱うが、日本の建物分野には参入していない。
キビテクの強みはロボット、エレベーター、上位システムをまたぐ国内での統合の深さだ。弱みは規模で、拠点数が開示されない限り、HATSが製品になったのか受託案件の集合にとどまるのかを判断しにくい。
企業価値の背景
企業価値は開示されず、金額も円建てのみのため、デスクはドル換算やドル建て案件との順位比較を行わない。開示値でみると、シリーズBの約6億円は2024年3月の約8.1億円の0.74倍で、両発表の間隔は917日。2024年3月までの累計10億円超に今回分を加えると、開示ベースの累計調達額は16億円を超える。
既存の主要株主が再び出資する小ぶりの追加調達は、受託から製品へ移行する日本のディープテック企業ではよくある形だ。それ自体は不振の兆候ではないが、次に導入実績を開示する重みは増した。
今後の注目点
2027年3月末までのHATS SDK採用インテグレーターや顧客の公表。2027年9月末までのHATS接続拠点数、ロボット台数、メーカー数の開示。今後1年以内の住友商事グループ企業との事業提携。
アナリストの見方
論旨は、日本の投資家がメーカー混在のロボット群を束ねる中立の統合層に賭けており、キビテクのSDK公開は受託企業からプラットフォームへの転換点になり得るというもの。確度は低から中程度。製品の方向性と投資家の構成は一貫しているが、導入指標がなく、調達額も前回を下回った。
拠点数とSDKパートナーが開示されれば確度を上げ、大手ロボットメーカーやエレベーターメーカーが国内でオープンなマルチベンダー基盤を投入すれば下げる。
問うべき論点
現在HATSで稼働する拠点とロボットの数、接続しているメーカー数は。売上のうちライセンスと受託開発の比率は。SDKを採用したシステムインテグレーターはどこか。エレベーター連携は特定のメーカーと共同で構築したのか。住友商事グループでの導入計画はあるか。海外展開の予定は。
