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韓国、2030年までにAIロボット20万台を普及へ 政府が2027年に1700台超を直接購入

韓国の国家先端戦略産業委員会は9月30日、2030年までにAIロボット20万台を官民で普及させる方針を決めた。内訳は公共調達約1万5000台、民間普及約18万5000台で、政府は2027年に国民の安全、人手不足の現場、教育文化の3分野で1700台超を先行購入する。

韓国、2030年までにAIロボット20万台を普及へ 政府が2027年に1700台超を直接購入 (イラスト:ROBOTNESS)
要約

韓国政府がAIロボットの初期市場を自ら作り出す。国務調整室と産業通商部、科学技術情報通信部の発表によると、韓成淑首相は9月30日、ソウルの政府庁舎で第9回国家先端戦略産業委員会を主宰し、「国民が実感できるAIロボットとフィジカルAIの拡散方策」を議論した。2030年までに官民合同でロボット20万台を普及させる計画だ。

会議資料によると、20万台は二つの経路に分かれる。2027年から2030年の大規模な公共調達で約1万5000台、2026年から2030年の民間普及で約18万5000台である。政府は2027年に1700台以上を直接購入して配備し、2028年からは公企業と自治体に調達主体を広げる。インフラ管理や国防など政府調達の必要性が高い分野では購入を大胆に増やすとしている。

韓国のAIロボット20万台普及計画(経路別)
  • 政府の直接購入(初年度)
    開始年
    2027
    終了年
    2027
    台数
    1,700
  • 公共調達(公企業、自治体を含む)
    開始年
    2027
    終了年
    2030
    台数
    15,000
  • 民間普及
    開始年
    2026
    終了年
    2030
    台数
    185,000
  • 合計目標
    開始年
    2026
    終了年
    2030
    台数
    200,000

2026年9月30日の第9回国家先端戦略産業委員会の議題資料に基づく。2027年分は1700台以上と記載。公共1万5000台と民間18万5000台の合計が20万台。

2026年10月1日時点

初年度の1700台は三つの分野に投入される。国民の安全では災害、治安、国防の現場、人手不足では農業や福祉など反復的で負荷の大きい作業、教育文化では大学向けの研究用ヒューマノイドや史跡の巡回ロボットが対象だ。技術開発と実証を終えたロボットから購入し、性能不足や導入後の放置への懸念に応えるため、アフターサービスの管理体制を同時に整える。調達では国産部品の使用を促し、優れた製品には認証を与える。

民間向けには購入補助、レンタル支援、規制改善を組み合わせる。産業通商部と中小ベンチャー企業部は、中小企業と中堅企業による年1000台以上のロボット導入を50%の補助で支援する。初期費用なしでロボットを借りられるレンタル事業は2027年上半期までに設計する。工場でのヒューマノイド活用や4足歩行ロボットの屋外走行に関する安全指針も整え、2027年には300億ウォンを投じて10業種向けの特化型ヒューマノイドを開発、商用化する。

量産拠点は2か所だ。セマングムと全羅北道ではロボットファウンドリーを核とする大規模クラスターを造成し、自前の工場を持たないスタートアップの生産を支援する。セマングムに投資する現代自動車の協力会社には研究開発の優遇を強める。同じ会議でロボット分野初の国家先端戦略産業特化団地に指定された大邱慶北(亀尾、浦項)がもう一つの拠点となる。資料によれば先導企業はHD現代ロボティクス、エスエル、ニューロメカ、磁化電子、サムスン電子、LGイノテックなど16社で、先導企業の3兆7754億ウォンを含め2032年までに総額5兆3839億ウォンを投資する。2030年に世界のヒューマノイド生産量の20%を占める目標を掲げ、現状は1%にとどまる。

データ基盤の整備も柱の一つだ。省庁横断のフィジカルAI実証で集めたデータをライブラリーに集約し、汎用シナリオのデータを生成、検証するトレーニングセンターを建設する。現場データで独自のフィジカルAI基盤モデルを学習させ、公共調達したロボットを賢くしていくデータフライホイールを描く。人手不足分野ではまず郵便物流に適用し、安全分野では橋梁の人命救助ドローン、海洋ごみを回収する水上ロボット、火災現場で放水する4足歩行ロボットなどを投入する。

政府の現状認識は厳しい。資料はヒューマノイドの市場シェアを中国87%、米国3%、韓国1%、4足歩行ロボットを中国51%、米国3%、韓国1%以下とした。国内企業は需要と技術力の不足から研究開発にとどまり、量産は準備段階にあるとし、いま初期市場を開かなければ産業が競争基盤を失いかねないと指摘した。

国別AIロボット市場シェア(韓国政府の提示値)
  • ヒューマノイド
    中国(%)
    87
    米国(%)
    3
    韓国(%)
    1
  • 4足歩行ロボット
    中国(%)
    51
    米国(%)
    3
    韓国(%)
    1

委員会の議題資料に記載された数値。韓国の4足歩行ロボットのシェアは1%以下とされ、ここでは1と表記。算出基準と期間は非公表。

2026年10月1日時点

日本にとっても示唆は大きい。日本では富士通がファナック、安川電機、川崎重工業と組んでNVIDIAの技術を使うフィジカルAI基盤づくりを進めるなど、産業用ロボット大手を軸にした取り組みが目立つ。一方、韓国は政府が数量目標を示して最初の買い手になる道を選んだ。IDCによると2026年上半期の世界のヒューマノイド出荷は2万5000台弱で、うち中国が1万9000台超と約77.9%を占めた。人手不足が深刻な日韓両国で、政府調達をどこまで需要創出に使うかが分かれ目になる。

課題も残る。発表資料は2027年の購入予算と単価を示しておらず、予算は国会審議を経る必要がある。4年ほどで世界生産に占める比率を1%から20%に引き上げる目標は、中国勢が増産を続けるなかでは野心的だ。国産部品の優遇は部品産業を育てる一方で初期の単価を押し上げかねず、災害や国防の現場投入には公開データでまだ裏付けられていない信頼性が求められる。

今後の日程は資料に示されている。新たな特化団地ごとに推進団を設けて2026年下半期に詳細な育成計画をまとめ、同時期に省庁横断の支援協議体を立ち上げる。レンタル支援事業の設計は2027年上半期まで、最初の政府購入は2027年中に実施する。

ROBOTNESS分析

韓国のロボット政策は研究開発の支援から完成品の購入へと軸足を移しており、公共調達1万5000台の意味は台数よりも現場データと導入実績にある。

根拠は、すべての普及経路がデータと結び付けられている点だ。政府が購入したロボットのデータは共有ライブラリーと独自基盤モデルに入り、調達では国産部品が優遇される。IDCの集計で2026年上半期のヒューマノイド出荷の69%が研究教育、展示、政府のデータ収集センター向けだったことを踏まえると、中国勢が出荷を伸ばした道筋と重なる。

最も強い反論は、公共調達は商業需要の代わりにならないというものだ。中国は厚い国内サプライチェーンを背景に量を伸ばしたが、韓国政府の資料自身が国内企業の需要と技術の不足を認めている。未成熟な製品を大量に買えば、競争力の低い製品が固定化する恐れがある。

強気シナリオでは、2027年分が予定通り現場に入り、アフターサービス体制が稼働率を支える。韓国勢は公共の導入実績をてこに50%補助の中小企業市場で受注を広げ、大邱慶北の先導企業が自動車部品ラインをロボット部品に転換し、韓国が中国以外のヒューマノイド部品供給源として地位を築く。

弱気シナリオでは、予算が目標台数に届かず発注が一部の大企業に偏り、ロボットは展示用の設備にとどまる。中国製品の価格競争で韓国製ハードは公共市場の外で売れず、世界生産20%の目標は立ち消えになる。

注目すべきシグナル

  • 2026年下半期:大邱慶北ロボット特化団地の詳細育成計画と省庁横断の支援協議体の発足
  • 2026年12月:2027年度予算でのロボット公共調達額と業種特化ヒューマノイド300億ウォン事業の扱い
  • 2027年上半期:ロボットレンタル支援事業の設計と最初の公共調達の入札公告
要点
決定機関
第9回国家先端戦略産業委員会(2026年9月30日)
普及目標
2030年までにAIロボット20万台
公共調達
2027〜2030年に約1万5000台
民間普及
2026〜2030年に約18万5000台
2027年の政府購入
1700台超
中小企業支援
年1000台以上、50%補助
業種特化ヒューマノイド
10種、2027年に300億ウォン
大邱慶北特化団地の投資
2032年までに5兆3839億ウォン(先導企業16社)
ヒューマノイド生産目標
2030年に世界生産の20%(現状1%)
出典
    ROBOTNESS インテリジェンス
    1. 01

      なぜ重要か

      韓国政府がAIロボットの自らの購入台数を年次で示したのは初めてだ。2027〜2030年の公共調達1万5000台は、受注がないため研究開発段階にとどまるとされる国内メーカーにとって、見通しの立つ最初の顧客となる。

      調達をデータ収集と独自のフィジカルAI基盤モデルに結び付けた点も重要だ。補助政策であると同時に産業データ戦略でもあり、どのロボットソフトが韓国の現場データで学習するかを政府が左右できる。

    2. 02

      競合分析

      比較の基準は中国だ。韓国政府はヒューマノイドのシェアを中国87%、韓国1%とみており、IDCは2026年上半期だけで中国の出荷を1万9000台超と集計した。中国勢は研究教育や政府のデータセンター需要で量を伸ばしており、韓国の公共調達はこの経路をなぞる。

      日本はファナック、安川電機、川崎重工業といった産業用ロボット大手の技術力と、富士通などとのフィジカルAI連携が軸で、政府が数量目標を掲げて買い手になる仕組みはない。米国はFigure AIやApptronikなどへの巨額の民間投資と自動車工場での実証が中心だ。

    3. 03

      企業価値の背景

      調達予算と単価が公表されていないため、韓国メーカーの売上機会はまだ算定できない。公表された数字は供給側に集中しており、大邱慶北特化団地の5兆3839億ウォン(2032年まで)と2027年の業種特化ヒューマノイド300億ウォンが中心だ。

      韓国の上場ロボット企業にとって2027〜2030年の需要リスクは下がるが、実行リスクは上がる。発注は多くの分野と企業に分散する可能性が高く、公共の発注者が求めるアフターサービスは利益率を圧迫しうる。

    4. 04

      サプライチェーンへの影響

      公共調達は国産部品の使用を促し、大邱慶北特化団地は地域の自動車部品企業のロボット部品への業種転換を支援する。セマングムのロボットファウンドリーは工場を持たないスタートアップに受託生産を提供し、現代自動車の協力会社の投資を優遇する。

      ヒューマノイド向けの減速機、アクチュエーター、センサーは日本企業の得意分野だ。短期的には韓国の量産拡大が日本製部品の需要を生むが、国産部品優遇が強まれば中長期では韓国の公共調達での日本製部品の採用余地が狭まる可能性がある。

    5. 05

      今後の注目点

      2026年下半期に出る大邱慶北特化団地の詳細計画は、先導企業16社が3兆7754億ウォンをどう分担するかを示す。12月に固まる2027年度予算は、1700台分が満額確保されたかを測る物差しになる。

      2027年上半期のレンタル事業設計と最初の入札公告では、ロボットの種類、技術要件、国産化基準が明らかになり、実際に応札できる企業が決まる。

    6. 06

      アナリストの見方

      見立て:今回の方策は信頼できる需要シグナルだが、成否は予算執行とアフターサービスにかかる。確信度は中程度。台数配分と日程は具体的で所管官庁も明確だが、予算と単価が欠けており、最大の不確実性が残る。

      2027年度予算が1700台を満額で裏付け、入札基準が仕様書の数値より現場性能を評価するなら確信度を引き上げる。発注が細かく分散し、どのメーカーも意味のある量産規模に届かなければ引き下げる。

    7. 07

      問うべき論点

      2027年の1700台に充てる予算はいくらで、そのうちヒューマノイドは何台、4足歩行ロボット、ドローン、サービスロボットは何台か。

      国産部品の比率はどう測り、演算チップやAIモデルにも適用されるのか。公共調達ロボットが集めたデータの所有権とアクセス権は誰にあり、民間企業はそのデータで学習できるのか。